研究課題/領域番号 |
10672144
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
小山 完二 筑波大学, 臨床医学系, 講師 (70205532)
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研究分担者 |
後藤 勝年 筑波大学, 基礎医学系, 教授 (30012660)
幸田 幸直 筑波大学, 臨床医学系, 教授 (40143482)
阿久沢 尚士 群馬県警察本部, 科学捜査研究所, 主任研究員
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キーワード | グルホシネート / 中毒 / けいれん / 呼吸停止 |
研究概要 |
グルホシネート含有除草剤の服毒では、重症例であっても服毒直後は目だった症状が無く、服毒後6〜40時間の潜伏期の後に昏睡、呼吸停止、痙攣など重篤な中枢神経症状が発現する。従って、潜伏期の間に重症化するかどうかを判定できれば、安全に患者管理を行なうことが可能となる。本研究は、患者の重症化をグルホシネートの血清中濃度から予測できるかどうかを明かにするのが目的である。 調査開始以来、患者18名についての調査を終了した。中枢神経症状を呈さなかった軽症例が12名、上記の重篤な中枢神経症状を呈した重症例が6例であった。推定服毒量は軽症例で10〜250ml(平均69ml)、重症例で10〜300ml(平均140ml)であった。100ml以上服毒した患者8名のうち重症化したのは5例、100ml未満を服毒した患者10名のうち重症化したのは2例であり、両群に有為差が認められた(Fisher′s Exact P=0.031)。グルホシネートの血清中濃度については、15名の患者について測定が行なわれた。血清中濃度は時間とともに低下するので、単純に平均値の比較は意味が無く、時間経過を考慮にいれて評価する必要がある。昨年までに行なった文献調査(文献1)によれば服毒後2時間70ppm、8時間5ppmを結ぶ直線(判別ライン)より上ならば重症例、下ならば軽症例であることが示されている。今回は判別ラインよりも上で重症6名、軽症3名、判別ラインよりも下で重症例は無く、軽症6名であった(Fisher′s ExactP=0.016)。この結果から、服毒量よりも血清中濃度の方が患者の重症化を正しく反映していることが推定される。とくに、血清中の濃度から重症化を判定した場合にはfalse negative(血清中の濃度が判別ラインよりも低いのに重症化する症例)が少ないのが特徴であり、これは、実際の診療の現場で患者管理を安全に行なう上での大きな利点であると考えられる。今後、患者数が増し、さらに詳細に検討する予定である。 文献1)小山完二 他二日本救急医学会雑誌8:617-8,1997.
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