研究概要 |
近年、我が国では、除草剤グルホシネート(GLF)の自殺目的による服毒中毒が増加している。この中毒では服毒後6〜40時間程度の潜伏期を経た後に意識レベルの低下、全身痙攣、呼吸停止などの重篤な所見が出現する^<1)>。患者は急激に増悪するので医師の対応が遅れ不幸な転帰をたどる場合がある。また、重症化への危惧から過剰な診療が行なわれる場合もある。もしも、重症化をあらかじめ予測できれば、適切な患者管理を行なうことが可能となる。これまでにも我々は、本中毒の患者の重症化と血清GLF濃度の関連について報告しているが^<2)>、平成11年度は、より多くの症例を検討した。[方法]本研究のために結成された研究グループが調査し得た74例を対象とした。昏睡,全身痙攣、呼吸停止のいずれかを呈した症例を重症、いずれも呈さなかった症例を軽症とし、服毒後の時間に対し各症例の血清GLF濃度を片対数でプロットした。[結果]重症例は42例(男15、女27、22〜86歳)、軽症例は32例(男21、女11、20〜89歳)であった。血清GLF濃度については、重症例は軽症例に比べ高く位置する傾向がはっきりと認められた。過去に報告した判別ライン(服毒後2時間70ppmと8時間5ppmを結ぶ直線):A線^<2)>のほかに、A線の上方をA線にほぼ平行に走るB線(服毒後2時間200ppmと8時間15ppmを結ぶ直線)を設定したところ、A線より下ではすべて軽症例、B線より上ではすべて重症例であり、A線とB線の間では重症例と軽症例がそれぞれ約50%の割合で混在していた。[結論]症例の80%はA線とB線に狭まれない領域に存在しており、現実的に血清GLF濃度は重症化の有用な指標となることが示された。[文献]1)小山完二:医学のあゆみ185:192-3,1998.2)小山完二 他:日救急医会誌8:617-8,1997.
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