麻酔閉胸犬において、アデノシン受容体の非選択的拮抗薬であるaminophyllinと群抗不整脈薬(MS-551、選択的カリウムチャネル遮断薬)単独、および併用による除細動効率の修飾について検討した。高頻度刺激によって心室細動を誘発し、120秒後に測定した除細動閾値(DFT)は119±22V/kgであった。細動誘発60秒後に投与したMS-551(2mg/kg)はわずかにDFTを低下させる傾向にあったが有意ではなかった(109±23V/kg)。これまでの検討では心室細動の持続が60秒の時点で、MS-551はDFTをおよそ15%低下させるので、細動が遷延したときには群抗不整脈薬の除細動効率を向上させる効果が小さくなる可能性が示唆された。一方、aminophyllinの急性投与はDFTを減少させる傾向はなく、むしろ通電に抵抗性となる個体も認められた(〜20%)。両剤を併用した個体でも、対照値を有意に低下させることはなかった。血行動態的には薬剤投与後に収縮期圧の回復が不良となる個体が認められた。薬剤の電気生理学的な効果の指標となる心室細動周期の変化は、閾値の変化によらず、薬剤投与のおよそ40秒後から確認された。MS-551、aminophyllinのいずれにおいても心室細動周期の延長が出現したが、前者においてより顕著であった。これらの結果は、ひとつには対照値を得るための細動/除細動のエピソードを行った後で、薬剤効果の評価を行わざるを得ないために、経時的な閾値の漸増の影響が考慮される。また細動によるアデノシン産生の亢進が除細動効率を減弱する過程は、今回閾値の測定を行った時間より遷延した心室細動において顕著になるものであると推測された。
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