麻酔閉胸犬において、直流通電による心室細動除細動に関与する諸因子について検討した。1)DFTの修飾因子が、通電により直接脱分極に至らない心室筋の不応期(post-shock recovery interval:PSRI)にいかなる関係を有するかを調べた。その結果、遅延整流カリウム電流の遮断によるAPDの延長でも、二相性パルスによる通電でもPSRIの延長の程度がDFTの低下と相関していた。2)Naチャネル遮断薬、APD延長を主たる薬理作用とするIII群薬によるDFTの変化の程度がパルス波形によって異なるか否かを検討した。その結果、臨床で用いられる4薬剤はその所属する群によらず、DFTへの作用はパルス波形とは独立して均一であることが明かとなった。3)抗不整脈薬以外の薬物、ここでは血管拡張作用のある心房利尿ペプチド(ANP)によるDFTの変化を測定し、ANPがDFTを低下させることを明かとした。4)アデノシン受容体の非選択的拮抗薬であるaminophyllinと群抗不整脈薬(MS-551、選択的カリウムチャネル遮断薬)によるDFTの修飾について検討した。MS-551はわずかにDFTを低下させる傾向にあったか、aminophyllinの急性投与はDFTを減少させる傾向はなく、むしろ通電に抵抗性となる個体も認められた(〜20%)。 以上より、APD延長作用を有するIII群抗不整脈薬はDFTを低下させ、臨床応用の可能性が示唆されるが、除細動効率を低下させるアデノシンをターゲットとした拮抗薬はDFTの低下に結び付く作用を発揮することは難しいと思われた。
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