PTCA施行後の再狭窄は、初期反応として血管傷害部位への白血球や血小板の集積がみられることから、再狭窄は血管傷害に対する治癒過程の炎症性反応の結果と捉えることができる。これら炎症性細胞は、傷害により活性化された血管内膜に接着することにより活性化され、活性酸素、サイトカイン、細胞増殖因子等を産生・放出することから、血管平滑筋細胞の遊走・増殖などへの関与が指摘されている。一連の炎症性反応は、これら炎症性細胞の血管内膜への接着から開始される。そこで本研究では、各種血管傷害モデルを用いてこの細胞間接着阻害による血管肥厚抑制の可能性を検討した。血小板接着に関与するvon Willebrand因子阻害薬aurintricarboxylic acidはハムスター頚動脈カテーテル擦過モデルにおける血管肥厚を有意に抑制した。白血球接着の第一段階、rolling反応に関与するL-およびP-セレクチン阻害薬fucoidinの効果をVitaminE(VE)欠乏症のラット(バルーンカテーテル擦過法)およびマウス(結紮法)を用いて検討した結果、fucoidinはVE欠乏時の内膜肥厚を有意に抑制したが、対照正常動物では有意な影響はみられなかった。なお、ラット、マウスともにVE欠乏により傷害後の血管内膜肥厚が有意に増加していた。傷害部位での活性化白血球接着を生体位O^-_2依存性化学発光法にて検討した結果、VE欠乏時には白血球の接着が顕著に増加していた。なお、白血球細胞膜表面のL-セレクチン発現には両群で差はみられなかったことから、VE欠乏はrollin反応自体には影響せず、その後の接着、炎症関連物質の産生・放出等の反応を増強したものと思われる。以上の結果より、白血球の血管肥厚形成への関与は過酸化状態などにより異なることが示唆されたが、接着分子を標的とした炎症性細胞の接着阻害療法はPTCA後の再狭窄予防に有効である可能性が示唆された。
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