1. ブラジキニンの受容体アゴニストとして新たに合成されたFR190997の薬理作用を検討した。マウス足浮腫モデルにおいては、FR190997はブラジキニンよりも長時間作用することが明らかとなった。また、B2アンタゴニストの効果から、B2受容体を介していることが判明した。ラットにおける全身血圧下降反応においても、ブラジキニンより長時間にわたって作用することが明らかとなった。生体における長時間作用するB2特異的アゴニストとして、FR190997の評価を行った。 2. ラットのブラジキニン受容体B1もしくはB2の遺伝子構造を解明した。また、B1およびB2受容体それぞれを発現した細胞培養系を構築した。それにより、ブラジキニン受容体の細胞内情報伝達系について検索を行った結果、どちらの受容体発現細胞においても細胞内カルシウム濃度増加が生じたので、生理的に機能する受容体発現細胞の構築が確認された。更に、これらの細胞を用いて、アゴニスト刺激後の作用について検討した。その結果、遺伝子調節因子のAP-1が、どちらの受容体においても活性化されることが明らかとなった。また、様々な阻害薬を用いた検討から、MAPキナーゼやプロテインキナーゼCの活性化も生じてくることも明らかにした。現在までに得られた結果からではB1受容体とB2受容体の情報伝達には差が見られないが、B1受容体の生理学的・病理学的意義を明らかにすべく検討を重ねている。これらの受容体発現培養細胞系において細胞当たりの受容体発現数をB1とB2で比較すると、同じ強さの薬理活性を示すのにも拘わらず、Blの方が圧倒的に少ないことが明らかにされた。
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