研究課題/領域番号 |
10672157
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
安原 一 昭和大学, 医学部, 教授 (70053999)
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研究分担者 |
倉田 知光 昭和大学, 医学部, 講師 (80231299)
内田 英二 昭和大学, 医学部, 助教授 (80175223)
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キーワード | 抗悪性腫瘍薬 / cytochrome P450 / 薬物相互作用 / ヒト肝ミクロソーム / 代謝阻害 |
研究概要 |
本年度我々は、平成10年度に行った検討を踏まえ、ヒト肝ミクロソーム画分酵素源を用いて、種々抗癌剤の各種cytochrome P450(CYP)に対する阻害作用に関して検討した。 1.ヒト肝ミクロソーム画分酵素源を用いた種々抗癌剤のCYP2C19および3A4分子種に対する阻害効果の検討 昨年度の本研究事業において検討した我が国で汎用されている代表的な抗癌剤9種(シクロフォスファミド(CY)、ダカルバジン、テガフール、エトポシド(ET)、ビンクリスチン(VC)、ビンブラスチン(VB)、タモキシフェン、ダウノルビシン、ドキソルビシン)の各種CYP分子種に対する阻害作用の結果を基に、本年度は、特にCYP3A4、2C19に対する影響が顕著であったビンカアルカロイド(VC、VB)の阻害作用に関して精査した。それぞれのCYP分子種に対する影響は、それぞれのCYP分子種に対する代表的な基質であるミダゾラム(CYP3A4)、メフェニトイン(CYP2C19)を用いて行った。その結果、それぞれのCYP分子種に対する阻害様式は、VB、VC共に競合的阻害が示された。VCのCYP3A4、2C19に対する阻害のKi値はそれぞれ30μM、80μMであった。一方、VCのKi値は58μM、91μMであった。これらの結果より、VBの臨床的血中濃度を考慮すると、CYP3A4に対する薬物相互作用の可能性が示唆された。 2.多剤併用時の薬物相互作用に関する検討 CY、ET、VCの単独、2剤併用時および3剤併用時のCYP3A4、2C19に対する影響を検討した。その結果、これら3剤のうち2剤併用時のCYP3A4に対する影響は、単独使用時と比較し、必ずしも相加的には認められず、むしろ減弱が示された。また、3剤併用時にはその傾向は更に強まる事が示された。一方、2C19に対する同様の検討よりET、VC併用時に相加的に近い阻害が示されたが3剤併用時にはCYの影響は殆ど認められなかった。これらの結果より、多剤併用時には、全ての併用薬物が相互に影響し合うのではなく、酵素に対する親和性の高い2種が主に関与することが示唆された。また、本検討より、それぞれの抗癌剤の代謝経路の変化が示唆され、今後、指標薬物に対する代謝阻害効果の評価と同時に、それぞれの抗癌剤の代謝に関しても検討する必要性が考えられた。
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