珪肺症患者における治療薬であるイソニアジドおよびテオフィリンの適正使用に必要な基礎データを得るために本年度は、以下の検討を行った。 (1) 血漿中イソニアジドおよび主代謝物アセチルイソニアジドの高速液体クロマトグラフィによる定量法の確立。 分析は逆相系のL-カラム(4.6φ×15cm:化学検査協会)、前処理はL1180カラム(化学検査協会)を用い、移動相は5mMSDSを含む0.01Mリン酸1ナトリウム(pH2.5)/アセトニトリル(80:20v/v)の混合溶液、前処理用は5mMSDSを含む0.01Mリン酸1ナトリウム溶液(pH2.5)、検出波長はUV267nmで定量法の確立を試みた。その結果、血漿中イソニアジドおよび主代謝物アセチルイソニアジドを良好に分離できる方法を確立した。 (2) 被験者のアセチル化代謝能に関する遺伝子型のスクリーニング法の確立。 イソニアジドとテオフィリンとの薬物相互作用に関する臨床試験への参加者を選出するために、被験者のアセチル化代謝能に関する遺伝子型スクリーニング法の確立を試みた。被験者の末梢血からヨウ化ナトリウム法によりDNAを抽出し、目的遺伝子のプライマーを用いてPCR装置にて遺伝子を増幅させた。次に制限酵素を用い増幅したDNAを切断して電気泳動にて変異遺伝子の有無を確認し、NAT2゚4、NAT2゚5B、NAT2゚6A、NAT2゚7Bのアセチル化代謝能の遺伝子型を判定する方法を確立した。 (3) イソニアジドとテオフィリンとの薬物相互作用に関する臨床試験への参加者の選出 現在、(2)で確立した遺伝子型判定法を用いて、健常志願者55名についてアセチル遺伝子型の判定を行っている。その中からrapid acetylatorとslow acetylatorに該当する被験者計12名を選出し、Good Clinical Practiceに従い4月から試験を実施する予定である。
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