珪肺症患者における治療薬であるイソニアジドおよびテオフィリンの適正使用に必要なデータを得るために本年度は、以下の検討を行った。 (1)臨床試験での被験者選出のためのN-acetyltranferase(NAT)2^*遺伝子型のスクリーニング。 昨年に引き続き、本試験の実施予定施設の登録されている健常成人ボランティア206名について開発したNAT2^*遺伝子型判定法を用いてNAT2^*遺伝子型の判定を行った。昨年の結果とまとめて解析した結果、282名において、4/4が50.7%、4/6Aが23.4%、4/7Bが14.5%、4/5Bが1.8%、5B/7B、6A/6A、6A/7B、7B/7Bが、それぞれ1.1%、2.8%、2.5%、3.2%存在した。これらの頻度は、過去に報告されたものとほぼ同じであった。 (2)イソニアジドとテオフィリンとの薬物相互作用に関する臨床試験。 判定した種々のNAT2^*遺伝子型の被験者8名において臨床試験を行い、その一部(2名)の解析結果について昨年報告した。本年度は昨年の時点で未測定であった6名についてイソニアジドおよびテオフィリンの血漿中および尿中薬物濃度を開発したHPLC法を用いて測定し、解析を行った。その結果、テオフィリンの体内動態は単独投与時に比べ、イソニアジド併用時において血中濃度が上昇し、血中濃度曲線下面積(AUC)も増加し、尿中排泄量が増加することが明らかになった。イソニアジドの体内動態は、テオフィリン併用時において血中濃度が低下する傾向が見られた。今後被験者を増やして検討する予定である。 (3)珪肺症患者におけるテオフィリンの適正使用の検討 テオフィリン服用中の珪肺症患者12名の血中テオフィリン濃度を得た。現在、薬物動態を解析中であり、今後さらに患者数ならびに測定値を増やす予定である。
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