研究概要 |
珪肺症患者における治療薬であるイソニアジドおよびテオフィリンの適正使用に必要なデータを得るために本年度は、以下の検討を行った。 (1)珪肺症患者におけるテオフィリンの薬物動態の検討 珪肺症患者におけるテオフィリンの適正使用に有用な情報を得るために、昨年度に引き続きテオフィリン製剤(主に徐放性製剤)を服用中の珪肺症患者148名について血中テオフィリン濃度を調べ、総計160名の血中テオフィリン濃度(計539濃度)について母集団薬物動態学解析用プログラムNONMEMを用いて、珪肺症患者でのテオフィリンの母集団薬物動態値を算出し、さらにそれらへの影響因子の検索を行った。解析の結果、珪肺症患者での総クリアランス(CL)は1.56L/h、分布容積(Vd)は38.5L、吸収速度定数(Ka)は0.537h^<-1>であった。個体間変動(ω,CV%)については、ω_<cL>43.5%、ω_<vd>87.6%、ω_<Ka>190.3%、個体内変動(σ)は2.1μg/mL(SD)であった。珪肺症患者群での半減期は17.1時間であり、我々が試験を行った健常成人でのテオフィリンの薬物動態値(CL6.92L/h,半減期9.4h)と比較して、珪肺症患者ではCLが低下しており、半減期が延長していることがわかった。また影響因子の検索については、CL、Vd、Kaについてイソニアジドが有意に影響を及ぼすことは認められなかった。これらの結果より、珪肺症患者におけるテオフィリンの薬物動態が健常成人とは異なることが示唆された。今回、その原因については特定できなかったとはいえ、これらの情報は珪肺症患者におけるテオフィリン製剤の適正使用に非常に有用な情報と考えられる。
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