研究概要 |
心筋の収縮力とミトコンドリア機能の関係を主に検討した. 1. Langendorff心の灌流停止による急性ポンプ不全の発生,再灌流による高エネルギーリン酸,電解質動態の変化をNMR,F1uorometryにより非踏襲的に測定解析した.Na-H交換阻害薬の投与により心停止前と再灌流後の収縮力(LVDP)の回復力は,無投与群の30%に対し,80%以上の高い値を示した.薬物投与群は虚血後半のCa増大を抑制し,虚血後半にもATPの存在を認め,再灌流中のATP,PCrの回復も早かった.これらの結果により虚血再灌流障害に,ミトコンドリア機能の重要性が認められた. 2. ミトコンドリア内のCa増大はNOプレカーサー L-Argにより調節機序が働いている様に抑制された.そこでミトコンドリアのタンパク質のウエスタンブロット法を行い,c(e)NOSの存在を確定した.このNOSは虚証再灌流時に重要であるとの結果を得た.更にミトコンドリアへのNOSの組み込み,分布について抗体を用いた電顕の測定の結果,イオン動態に関係する内膜に存在する事がより明らかになった. 3. 灌流Ca感受性蛍光試薬負荷ミトコンドリア標本において高濃度処理後の生理濃度外液Ca,外液pHの変化によりミトコンドリア内Caは急上昇し,ミトコンドリアレベルでの虚血再灌流障害を示している.この時に発生する活性酸素,NOラジカルの発生についてEPRを用いて確認し定量した.この上昇は灌流心において回復力の改善を示した薬物(Na-H交換阻害薬など)で抑制される程度を呼吸(pO_2)とNO・の変化をNO測定装置により、同時に測定する. 4. 更に,急性心収縮力低下や随伴する細胞壊死(アポトーシス)とミトコンドリア機能との関係を、プロトンを中心とするATP産生系,カルシウムなどの電解質動態,電子伝達系におけるラジカル関与などから明らかにしたい.
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