研究概要 |
制癌剤シネプラチンとカルボプラチンを用い、in vitro Caco-2培養細胞系において消化管管腔側apical側(A側)から基底膜側basolateral側(B側)への両薬物の透過性について調べた。シスプラチンの見かけの透過クリアランスPapp.値は約0.0043ml/min/cm^2であったのに対し、カルボプラチンのPapp.値は0.0074ml/min/cm^2と約2倍近い高い値を示した。シスプラチンがCaco-2細胞のA側膜上に発現しているP-gpによる汲み出し輸送系の基質になっていると考えるよりも、現時点でのデータでは脂溶性が高く膜透過性の良好なカルボ系プラチンの吸収性の高さによるものであると考える方が妥当である。一方、シスプラチンを各種のカウンターイオン種と複合体を形成させることにより、P-gp輸送系への親和性に及ぼす影響について調べた。グルタチオン、チオ硫酸Na、マロン酸、クエン酸、コハク酸、DL-酒石酸、D-,L-酒石酸の各々と複合体を形成させてラットに経口投与したところ、循環血漿中最高濃度Cmax(μg/ml)は、各々平均1.4、1.7、1.8、2.5、2.0、1.8、2.9、1.3、1.1という値を示した。シスプラチン単独投与時に比べ、Cmaxの上昇は認められたが、著しい複合体間における差異は認められなかった。 今後はB側→A側の輸送、in vitroでの複合体のP-gp基質親和性について検討を行うことにより、低吸収性制癌剤の吸収特性をより明確にできるものと考えられる。
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