ミクログリアおよびアストロサイトなどグリア細胞は、神経細胞に比較し細胞死が起きにくいことが知られている。脳障害時に異常に活性化したグリア細胞は誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)を発現し、細胞死を引き起こすNOを大量に産生し、神経細胞死を引き起こす。しかしながら、グリア細胞はほとんど死に至らない。一方、強力な生体内抗酸化物質としてビリベルジンが知られており、その産生酵素としてヘムオキシゲナーゼが知られている。そこで、ヘムオキシゲナーゼに着目し解析した。ラット海馬に細菌内毒素リポポリサッカライド(LPS)およびインターフェロンγ処置するとiNOS発現・NO産生が起こる。その後、誘導型ヘムオキシゲナーゼ(HO-1)がグリア細胞で発現されることが明かとなった。また、ラットは一過性前脳虚血およびカイニン酸処置により海馬の遅発性神経細胞死が引き起こされることがよく知られている。この脳障害時でもグリア細胞は、HO-1を過剰に発現していた。以上のことから脳障害時に、ミクログリアおよびアストロサイトなどグリア細胞は、HO-1を発現するため酸化ストレスに対して耐性を獲得し、細胞死を回避することが推定された。 さらに、グリア細胞におけるHO-1誘導機構を培養グリア細胞を用いて解析した。LPSによるHO-1誘導はNOS抑制薬(NMAおよびNNA)により抑制されること、さらにNOドナー(SNAP)単独でHO-1誘導されることから、NOによってHO-1誘導が起こることが明かとなった。しかしながら、カイニン酸処置ではNO産生は起きないことから、他の経路の活性化が推定される。この点については、現在検討中である。
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