研究概要 |
前年度(平成10年度)において、各種の脳障害時に誘導型ヘムオキシゲナーゼ(HO-1)が誘導されることが明かとなった。そこで、HO-1を誘導するメカニズムを解明あるいは誘導する薬物を見出すことにより新規治療薬の開発に繋がると考え、in vitro培養系の混合グリア細胞を用いて解析した。興奮性アミノ酸のグルタミン酸に対する受容体は、NMDA型、AMPA型、カイニン酸型および代謝型に分類することができる。神経毒性を示すカイニン酸によってHO-1誘導が引き起こされるが、NMDAによっては誘導されなかった。またHO-1発現量はカイニン酸よりも、神経毒性の少ない代謝型受容体アゴニストtrans-ACPDの方が作用が強かった。この発現にはプロテインキナーゼCの活性化が関与することが明かとなった。 グリア細胞を細菌内毒素リポポリサッカライド(LPS)処置すると、誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)の誘導が起こりNOが大量に産生され、HO-1も誘導される。驚いたことに、非ステロイド性抗炎症薬(NSAlD)のインドメタシンおよび転写困子peroxisome proliferator-activated receptor-γ(PPARγ)に作用する内因性生理活性物質15-deoxy-△^<12,14> prostaglandin J_2(15d-PGJ_2)により、LPS誘発iNOS誘導およびNO産生は抑制されたが、HO-1誘導は増強された。インドメタシンおよび15d-PGJ_2の単独刺激によってもHO-1誘導が引き起こされた。このように、NSAlDおよびPPARγ作用薬は細胞障害性のiNOS誘導を抑制し、細胞保護作用のあるHO-1を誘導することを明かにした。これは、今後の細胞保護薬の開発に有用な手掛かりになると思われる。
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