研究概要 |
ミクログリアおよびアストロサイトなどグリア細胞は、神経細胞に比較し細胞死が起きにくいことが知られている。脳障害時に異常に活性化したグリア細胞は誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)を発現し、細胞死を引き起こすNOを大量に産生し、神経細胞死を引き起こす。しかしながら、グリア細胞はほとんど死に至らない。一方、強力な生体内抗酸化物質としてビリベルジンが知られており、その産生酵素としてヘムオキシゲナーゼ(HO-1)が知られている。そこで、1)一過性前脳虚血、2)カイニン酸の脳室内マイクロインジェクションおよび3)細菌内毒素リポポリサッカライド(LPS)およびインターフェロンγ(IFNγ)の海馬内マイクロインジェクションによりラット海馬神経細胞障害モデルを作成し、HO-1の発現について解析した。脳虚血1日後、神経細胞にHO-1蛋白質が発現されたが、その後発現量は減少し、神経細胞は死に至った。一方、ミクログリアおよびアストロサイトは、1)脳虚血、3)カイニン酸処置および4)LPS+INFγ処置により持続的にHO-1は誘導され、死に至ることはなかった。このようにHO-1を持続的に発現する細胞は、酸化ストレスなどの細胞障害刺激に対して耐性を獲得するものと推定された。 次に、培養グリア細胞を用い、HO-1を誘導する薬物の検索を行った。その結果、代謝型グルタミン酸受容体アゴニストtrans-ACPD、非ステロイド性抗炎症薬インドメタシン、転写因子PPARγ作用薬15-deoxy-△^<12,14> prostaglandin J_2にその作用があることが解った。本研究は、脳障害時における細胞保護薬の新規開発に有用な手掛かりになると思われる。
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