1. 神経細胞塩素イオン輸送機能の薬理学的解析 ラット胎児海馬培養神経細胞を用いて、塩素イオン感受性蛍光色素(MQAE)法により、アンモニアの細胞内塩素イオン濃度に及ぼす影響を検討した。アンモニア投与前の[Cl^-]iは8.2±0.6mM(n=25)であり、2mM NH_4Cl負荷24時間後14.8±1.9mM(n=8)、48時間後には22.1±1.8mM(n=15)と有意な上昇を示した。アンモニア負荷による[Cl]iの上昇は、細胞膜のCF/HCO_3交換輸送体阻害薬SITS、DIDS、又は炭酸脱水酵素阻害薬、アセタゾラミドの同時添加によって消失し、Na^+/K^+/2Cl共役輸送体阻害薬であるブメタニドの添加では変化しなかった。 2. 培養神経細胞の塩素イオン輸送体遺伝子と蛋白の発現解析 上記結果より、Cl^-/HCO_3交換輸送体の賦活化が、アンモニアによる細胞内Cl^-濃度上昇に関与すると考えられたため、脳での発現量の多いAE3のmRNA及び蛋白レベルでの変動を検討した。AE3のmRNA発現はcompetitive RT-PCR法により、又蛋白レベルでの検討は、AE3の部分ペプチドを家兎に免疫して抗体を作成し、Westernblot法にて行った。AE3のmRN本発現量は、2mM NH_4Cl48時間負荷の神経細胞では、無処置の細胞に比べて約2倍に増加し、蛋白レベルでは、165kDaのAE3様蛋白の増加が認められた。
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