アンモニア誘発神経細胞内Cl^-濃度上昇の機構 高アンモニア血症は、肝性脳症や先天性尿素代謝酵素欠損症における意識障害の主要な原因と考えられているが、その機構としてCl^-による抑制性シナプス電位(IPSP)の障害が推測されている。本研究は、ラット培養海馬神経細胞を用いて、低濃度アンモニア長期暴露の神経細胞内Cl^-濃度に及ぼす影響、ならびにその機構を明らかにすることを目的として行われた。2mM MH_4Cl48時間暴露により、初代培養ラット脳海馬錐体神経細胞の細胞内Cl^-濃度は正常値(8.2±0.6mM)から約3倍に上昇した。このCl^-濃度上昇はアニオン交換体SIDS及びDIDSにより抑制され、Na^+/K^+/2Cl^-共輸送体やK^+/Cl^-共輸送体では阻害されなかったことからCl^-/HCO_3^-交換体の関与が示唆された。competitive RT-PCR、Western blot、各種キナーゼ阻害薬による検討からアンモニアによる神経細胞内Cl^-濃度上昇は、プロテインキナーゼCを介した脳型アニオン交換体(AE3)の発現促進によることが明らかとなった。本研究により、低濃度アンモニアの神経細胞内Cl^-濃度上昇を介する中枢神経抑制性制御の減弱を直接証明した。
|