研究概要 |
ヒトの中枢性または求心路遮断性頑痛症に対する有効性が認められている大脳皮質電気刺激誘発鎮痛の発現機序を解明するため,本年度はまず実験動物(ラット)において同様の現象が認められるか否かを検討した.次いで,非特異的NO合成酵素阻害薬L-ニトロアルギニンメチルエステルおよび神経型NO合成酵素阻害薬7-ニトロインダゾールが全身性投与によりラットの痛覚にどのような影響をおよぼすかを検討した. ラットの大脳皮質第一(SI)あるいは第二(SII)運動感覚野に双極電極を慢性的に植え込み,機械的刺激および熱刺激に対する侵害受容閾値に及ぼす電気刺激の影響を検討したところ,機械的侵害受容への影響は全く認められなかったが,熱侵害受容閾値の一過性の上昇傾向が認められた.またL5,L6脊髄神経結紮によって機械的刺激に対する痛覚過敏モデルを作成して,大脳皮質娠気刺激の効果を検討したが有意な効果は得られなかった.そこで,化学的侵害刺激法の1つであるホルマリン法で検討を行ったところ,SII刺激によって第II相侵害反応が有意に抑制された.一方,機械的侵害刺激法,熱侵害刺激法いずれにおいてもNO合成酵素阻害薬の抗侵害効果が認められたが,後者の検定法における効果の方がより低用量で認められた.また,L5,L6脊髄神経結紮痛覚過敏モデルにおいてもこれらの効果の増大は認められなかった. 上記所見に基づき,今後,各種鎮痛効力検定法を用いて,大脳皮質電気刺激とNO合成酵素阻害薬の相互作用を検討し,さらに,脊髄後角におけるc-fos発現を指標とした検討も行っていく予定である.
|