研究概要 |
モデル蛋白質としてovalbumin(OVA)を用い、これをラットに繰り返し投与した際の体内動態の変化を検討した結果、予め三回の腹腔内投与を行っておいたラットでは、静脈内投与後初期より血中からの速やかな消失が観察された。この時、血清中抗OVA-IgG抗体レベルに有意な上昇が認められたことから、抗原性を有する蛋白質を非経口的に繰り返し投与した場合には、全身免疫応答が賦活化され、その結果体内動態が大きく変化することが示された。この結果は、この様な蛋白質医薬品を長期的な治療に用いる場合、一定の薬理効果が得られない可能性を示唆するものと考えられる。また、免疫応答に起因したアレルギーなどの有害な副作用発現の可能性も示唆される。この様な問題に対し、本研究では、経口免疫寛容を利用した新しい改善法の有効性を検討した。ラットにOVAを繰り返し投与する前に、OVAの経口投与によって全身免疫に寛容を誘導しておいたラッドでは、OVAによる感作後においても血清中の抗体レベルに上昇は認められず、また、OVA静脈内投与後の体内動態も一定に維持されていることが明らかとなった。この時、OVAの経口投与量として、50mg,5mg,0.5mg/ラットの三種の投与量はついて検討したところ、いずれの場合にも経口免疫寛容が十分に誘導されたことから、投与量を減らすことによって実際の臨床応用の可能性が高まるものと期待される。しかしながら、すでに免疫感作された状態のラットにOVAの経口投与を行った場合には、経ロ免疫寛容の誘導が十分でなかったことから、今後、寛容の誘導を促進することが知られているLPSなどを用いた検討を行い、より有効なシステムの構築を行う必要性があると思われる。
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