本研究は、spinorphin(LVVYPWT)が好中球機能を介して抗炎症機構にどのように関与しているかメカニズムを解明することを目的としている。今年度は、下記の研究実績を得た。 1.エンケファリン代謝酵素(dipeptidyl peptidaseIII)に及ぼす効果 好中球表層には、エンケファリン代謝酵素であるneutral endopeptidase(CD10)やamino-peptidase N(CD13)の存在が知られており、免疫・炎症への調節に重要な働きをしていることが報告されている。今回、好中球表層に新たにdipeptidyl peptidase III(DPPIII)の存在を、特異阻害剤および特異基質を用いて同定した。また、同酵素に対する阻害物質として、spinorphinおよびその誘導体を検討して、本物質の16.5倍強力な活性を持つtynorphin(VVVPW)を見いだした。この物質は、水・有機溶媒に易溶であり、血清に対する安定性がspinorphinに比較し高いことを高速液体クロマトグラフィーにて解析した。 2.血中動態の解析 昨年度確立した定量法(ELISA)を用いて、健常人の血清中におけるspinorphinを測定した。平均0.23±0.25pmol/mlであり、エンケファリンと同レベルであった。 今後、炎症・疼痛患者においてspinorphinの含量がどのように変化するか、病態との関連を解析していきたい。
|