私は15例の急性骨髄性白血病患者から採取した白血病細胞をin vitroで培養し、G-CSF添加による細胞増殖や分化への作用を調べることにより白血病細胞のG-CSF反応性を検討した。同時にG-CSF添加前後の細胞から蛋白を抽出し、細胞内のMAPキナーゼ、JAK、STATなどの蛋白のG-CSFによるリン酸化作用を調べた。両者の結果を総合して、G-CSFによって増殖刺激される細胞ではG-CSFによって上記の蛋白がリン酸化されることがわかった。すなわち、上記の蛋白のリン酸化を調べることによって、G-CSFに対する反応性を、培養法で調べるよりも速く推測できることになる。しかしリン酸化を受ける蛋白の種類や強さによって、G-CSFが白血病細胞の自己再生と分化増殖のいずれを強く刺激するかの推測は困難であった。検体によってはG-CSF未添加でも上記の蛋白がリン酸化されているものが認められ、その意義について検討を進めている。G-CSFの白血病細胞に対する作用のこれまでの研究成果を総説として発表した(血液・免疫・腫瘍1998)。 こうした研究活動の中で、既知の慢性骨髄性白血病や慢性骨髄単球性白血病とは病像の異なる慢性白血病症例に遭遇し、その白血病細胞のG-CSFなどの造血因子に対する反応性やシグナル伝達系蛋白の解析を行い、その細胞特性を報告した(Acta Haematologica 1998)。また、別の患者の白血病細胞を培養する過程で樹立した細胞株の、造血因子に対する反応性やシグナル伝達系蛋白の解析を行い、報告した(Leukemia Research 1999)。
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