本研究の目的は、動脈硬化症などに対して直接の指標となりうる血液成分を見出すことにある。ここで、指標としては、酸化などの変性を受けた低比重リポ蛋白を取り上げて、その変動が動脈硬化の指標となりうるかを検討した。 まず、変性LDLとして、LDL中のアポBリポ蛋白のリジン残基がマロンルデヒドで酸化を受けたMDA-LDL(MDA-LDL)、LDL中脂質部位の燐脂質部位が酸化を受けたと考えられる酸化LDL(P-LDL)の2者を選択し、その血液中の挙動を検討した。それらの測定は、作成した単クローン抗体を利用したサンドイッチEIAである。その結果は、作成した抗体の特異性などから、MDA-LDLの方が動脈硬化などの変性を反映している可能性が高いことが示された。 また、この測定法での健常者での基準範囲は、23-5U/Iと求められ、糖尿病患者、ASOなど背景に動脈硬化をもつ疾患群では明らかな高値を示した。さらに、動脈硬化、虚血性心疾患などと高度の相関性を示す小粒子高比重LDLの存在群ではLDL粒子サイズとMDA-LDLは明らかな逆相関を示した。このことより、このMDA-LDLはこれまで臨床検査領域で利用されてきた動脈硬化に対してどの指標よりも効果的な指標である可能性が示された。今後この指標をより利用しやすいものとするために、採取試料の安定性を含め前処理による安定化を検討中である。
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