平成10年度は、フォトカウンター方式の発光検出器を購入し、その発光検出器と固定化ピラノースオキシダーゼ(PnOD)カラムリアクターを装着したFIA(flow injection analysis)システムを用いて、希釈試料(全血あるいは血漿を予め生理食塩水あるいは蒸留水で1万倍に希釈して作製) 10μLをインジェクションし、グルコースの高感度分析法の開発を試みた。発光反応により得られる光量が多い状態では光電子増倍管の出力信号はアナログ量として観測され、従来はそれを測定していたが、極微弱光ではアナログ量としての観察が困難で、離散的パルスとなり、このパルスをフォトカウンター方式の発光検出器でカウントすることにより極微弱光の光量を高感度で、正確な測定が可能であるといわれている。 血漿を蒸留水で1万倍希釈し、それを試料として本法とGOD・過酸化水素電極法との測定値には、相関係数r=0.988、回帰直線y=0.973x-3.78で、非常に良好な結果であった。全血を蒸留水で1万倍希釈し、両法による測定値には、相関係数r=0.988、回帰直線y=0.753x-14.84で、本法による結果はGOD・過酸化水素電極法による結果の約65%であった。それは溶血によるヘモグロビンの発光反応への影響ではないかと考えられる。全血を生食で1万倍希釈し、両法による測定値の間には、相関係数r=0.990、回帰直線y=0.793x-9.32であって、本法は希釈全血を用いても良好な結果が得られ、全血での血糖の測定が可能であると判明した。それを遠心し血球除去後の結果と全血を生食で希釈して得られた結果とはよく一致し、血球を除去してもしなくてもほとんど同じ結果が得られた。その理由はインジェクションされた試料中の赤血球の一部は溶血するが大部分は素通りするためだと思われる。本法では100万倍希釈標準液系列でも直線性を示した。
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