蚊が血を吸う程度の血液量でもって多項目の臨床化学分析が可能になるように、フォトカウンティング方式の発光検出器と固定化酵素カラムリアクターを装着したFIA(flow injection analysis)システムを用いて、希釈全血成分(グルコース、尿酸)の高感度分析を試みた。 1.グルコース測定---固定化ピラノースオキシダーゼカラムリアクター(2x20mm)を用い、希釈試料(全血を予め生食と精製水で、あるいは血漿を予め精製水で五千倍〜四十万倍に希釈して作製)10μlをインジェクションしてグルコースの高感度分析を試みた。分注器(アキュドライブ)の採用、ガラス製容器での精製水の保存(プラスチック製の洗浄瓶で保存された水は最悪)により再現性が大幅に改善され、また血漿採取より先に全血を採取することにより理論的な全血濃度を得た。その結果、希釈倍数を十万倍に上げても再現性は良好であった。全血を分注器を用いて精製水や生食で十万倍希釈して本法で得られたグルコース値とGOD-過酸化水素電極法による測定値は、精製水の場合、相関係数r=0.986、回帰直線y=0.916x-4.05であり、生食の場合、r=0.988、y=0.910x-3.00であった。また、血漿を精製水で十万倍に分注器で希釈して得られた測定値との相関は、r=0.987、y=0.979x-3.1であった。0〜400mg/dlグルコース標準液を最高40万倍まで希釈しても検量線は直線を示した。五千倍希釈全血測定ではヘモグロビンの影響は認められなかった。 2.尿酸測定---固定化ウリカーゼカラム(2x20mm)を用い、血清を精製水で五千倍希釈して本法により得られた尿酸値は日常検査法であるウリカーゼ-ペルオキシダーゼ方による結果とよく相関し、良好な結果を得た。
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