血液細胞は未分化な造血幹細胞から成熟細胞に至る間に、細胞の表面形質が変化する。表面形質の中でも特に、ABO糖鎖抗原の変化は、輸血のみならず骨髄移植などの臓器移植時の適合性を考える上で極めて重要である。そこで我々は、骨髄球系およびリンパ球系の細胞株から樹立した培養細胞を用いて、前駆細胞から成熟造血器細胞の分化段階におけるABO遺伝子mRNA(ABOmRNA)を測定することを試みた。ABOmRNAの決定は、我々が確立した半定量RT-PCR法を用いた。ABOmRNAの発現量は、NIH-1mageソフトを使った解析で行い、ABOmRNA量をβ2MmRNA(house keeping gene)量との比率で示した。 1.血液細胞分化におけるABOmRNA量 全ての細胞は、末梢血単核球層(PBMC)と同様にABOmRNAを発現していた。特に、K562とKOPM-28などの多能性幹細胞型におけるABOmRNAの発現量は、より成熟・分化した段階の細胞よりも高発現していた。また、未熟細胞型の骨髄球系細胞、common ALL、T cell type、B cell typeおよびPBMC間での発現量には有意な差は認められなかった。 2.ヘミンによるK562細胞の分化誘導療法 我々は、4日間ヘミンを作用させたK562細胞中のヒトヘモグロビンの存在とABOmRNA量の減少を明らかにした。 今回の研究で、我々はABOmRNAが造血器細胞の分化により変化することを明らかにした。また、ABOmRNAは多能性幹細胞レベルで発現し、ある段階まで高発現した後、分化とともに低下する傾向があることが示唆された。
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