研究概要 |
甲状腺種の発症にサイクロブリン遺伝子異常がどのように病因として関与しているかを研究する目的で、手術組織より抽出したRNAを用いダイレクトシークエンシング法にてサイログロブリンcDNAの塩基配列を決定した。先天性甲状腺種2例と異型腺腫様甲状腺種2例にそれぞれT3787CとT5983Aのミスセンス変異を認め、相当するアミノ酸置換はCys1263ArgとCys1995Serであった。変異サイログロブリン蛋白はエンドグリコシダーゼH消化および非変成ポリアクリルアミドゲル電気泳動法にて、細胞内輸送が障害されており小胞体内に停滞していることが確認された。その病態は一種の小胞体貯蔵病である。分子シャペロンGRP94,GRP78,calreticulin,PDIは蛋白レベルで増加していたが、mRNAレベルでも増加していたので、分子シャペロンの蓄積は転写レベルでの活性化が関係していることが明らかになった。分子シャペロン転写を促進する因子としてはIrelpとATF6が報告されているが、IrelpとATF6はmRNAレベルで増加していたので、IrelpとATF6遺伝子も関与していることが示唆された。また、現在のところ病因不明である腺腫様甲状腺種患者のサイクロブリン遺伝子を解析した。腺腫様甲状腺患者の新たに単塩基置換7か所を同定したが、これらのサイクロブリン蛋白は細胞内輸送は障害されていなかったことより、上記塩基置換は比較的稀なポリモルフィズムである可能性が高い。最後に、サイクロブリン遺伝子異常症の動物もであると思われるrdwラット遺伝子解析を進めた。ラットサイロブログリンcDNA全長をクローニングし、rdwラットのサイログロブリンcDNAの塩基配列を決定した。RdwラットにGly2320Argのミスセンス変異を見出し、変異サイログロブリン蛋白は正常に細胞内輸送されることなく、小胞体にとどまっていることを確認した。
|