研究概要 |
耐性の診断、治療のin vitroモデルとなりうるtrimetrexate耐性株化培養細胞MOLT-3におけるMDR1を介する多剤耐性は、耐性成立後も流動的で、耐性細胞の選択の原動力として、遺伝子不安定性を背景としてクローン性増殖が示唆された(98年度研究成果)ことから、耐性および遺伝子不安定性の分子機構を調ぺた。マイクロサテライト反復配列の高頻度変異の原因となるDNA修復システムとして、癌細胞で遺伝子変異の報告があるhMLH1およびhMSH2についてモノクローナル抗体を用いた組織免疫学的検討およびPCRによる遺伝子解析を行なった。その結果、欠失や変異は明らかでなかった。遺伝子不安定性の分子機構としては、他のDNAミスマッチ修復系遺伝子(hMSH3,hMSH6,hPMS2など)の異常が介在する可能性を検討する必要がある。 遺伝子不安定性の分子機構と耐性機構の多様性を明らかにするため、trimetrexate耐性のMOLT-3細胞の亜株それぞれの耐性機構を調べた。各種薬剤に対する感受性試験の結果、亜株の一つにおいて、methotrexateに高度交差耐性を示す細胞亜株が確認された。この亜株における耐性の分子機構として、標的酵素ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子発現上昇が明らかでなかった。このため、他の亜株と共通する同遺伝子のコドン31の点変異(TTC→TCC)以外の変異による酵素の薬剤親和性低下や薬剤の膜輸送低下など他の分子機構が想定され、現在、DHFR遺伝子やmethotrexateの膜輸送を担うRFC1遺伝子の構造解析中である。
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