健康増進の面から、自転車エルゴメーターにより運動負荷を行い、生体成分である乳酸、尿酸、ケトン体などの変動解析が行われている。これには被験者に何回もの採血を必要とするため、25μL以下の採血で被験者の採血負担を軽減し、かつ、より多くの情報を得ることが求められる。そこで、超微量測定が可能な高感度の酵素サイクリング法を取り上げ、かつ、自動分析機でも測定可能な条件の開発を進めた。 1)血中乳酸測定には乳酸オキシダーゼ(LOX)および乳酸デヒドロゲナーゼ(LD)を用いた酵素サイクリング法によってNADHの減少を測定し乳酸とピルビン酸の総量和を求める高感度測定方法を設定した。この方法によって、測定感度は従来の10倍近くとなり、25μLの採血・徐蛋白操作で0.16μL相当の全血で測定が可能になった。これは基準範囲上限付近(1mmol/L)検体では、1測定セル中の濃度は0.16n(1.6×10^<-10>)molとなっており、その時の感度である吸光度の変化は0.0045/minであった。検量線は20mmol/Lまで直線性を示した。日差再現性は3.0〜5.9%であった。従来のエンドポイント法であるLOX-POD-TOOS比色法との相関係数は0.987と高いものが得られた。なお、従来のLOX-POD-TOOS比色法では乳酸の単独測定であるのに対して、本法では乳酸とピルビン酸の総量和となっているので、回帰係数は1.06となった。 2)一方、酵素サイクリング法による血中ケトン体の超微量測定条件も設定した。 3)これらの生体成分への応用として、自転車エルゴメーターによる定量的な負荷量運動をかけ、その前後での血中乳酸、尿酸、ケトン体測定した。項目間できわめて興味深い結果が得られており、再確認のため現在、実験を展開している。
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