GPI-アンカー型蛋白質はglycosyl phosphatidylinositolを介して細胞膜に結合したユニークな脂質蛋白質群である。近年、これらの蛋白質が、シグナル伝達分子として機能することが明らかにされ注目されているが、そのシグナル伝達機構については、ほとんど解明されていない。申請者はGPI-アンカー型蛋白質であるCD59が細胞表面でdimerを形成していることを明らかにした。GPI-アンカー蛋白質は、細胞膜上のraftと呼ばれる膜構造に局在することが知られている.申請者は、刺激によるdimer形成が、raftのdynamicな変化をひきおこし、シグナル伝達を誘導するという仮説を提唱している。本研究ではdimer形成とシグナル伝達機構の関係を明らかにすることを目的とする. 本年度は、昨年にひきつづき、従来の抗体刺激に代わる、ligandによるシグナル伝達測定系の開発を試みた。CD59はC9に結合し、C9分子の重合を阻害することにより補体系を抑制することから、C9分子がCD59のligandとなる可能性がある。そこで、C9ペプチドの効果を「細胞内Ca^<2+>濃度の上昇」を指標として、測定した。その結果、ペプチド2(407-436)がJurkat細胞で、細胞内Ca^<2+>を上昇することを明らかにした。このペプチドが細胞増殖にどのような影響を与えるかを正常ヒトT細胞を用いて検討した。ペプチドはそれ自体では効果を持たなかったが、抗CD3抗体によるT細胞の活性化を抑制する傾向が認められた。
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