本研究の目的は、経皮的冠動脈形成術(PTCA)施行後40〜50%にも達すると言われ、治療の有効性を左右する再狭窄を、PTCA施行時の採血で予測できる分子マーカーを明らかにすることである。今年度明らかにし得た内容は、d-PTの最適化とPTCAに用いるデバイスによる再狭窄率の差がある種の分子マーカーで予知できる可能性を示唆したことであり、以下にその要旨を示す。 組織因子希釈プロトロンビン時間(d-PT)については、ヘバリンや微量の活性化第Vlla因子の影響をしらべ、測定原理の異なる凝固能検出器によるデータの比較も行い、最適化を果たした。また、本研究を実験モデルへ移行し発展させる目的で、ラットの凝固系検査としての応用を検討し、全血を用いたd-PT(WPT)を確立した。本法の有効性は自然発症高血圧ラットを用いて証明した。 PTCA前後の試料採取は順調に進んでおり、再狭窄の判定が終了した患者については、分子マーカーの測定を行っている。また、PTCAに用いるデバイスの種類についても検討を加え、特にvon Willebrand factorがデバイスによる再狭窄率の差異と関連する良好なマーカーであることを発見した。 これらの検討結果については、日本臨床病理学会、立山シンポジウムおよび日本循環器学会にて口頭で発表済みあるいは発表が決定しており、さらに一部は1999年のSeminars in Thrombosis and Hemostasisに掲載されることが決定している。
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