本研究の目的は、経皮的冠動脈形成術(PTCA)後の再狭窄を予測しうる分子マーカーを検索することであり、我々は以下に示すように臨床的および実験的にその候補を挙げ、研究を行った。 臨床的には、PTCAを行った患者について、そのデバイスの差により再狭窄の程度が異なることをvon Willebrand factorなどのマーカーで示唆した。実験動物モデルの血液凝固系について、まず自然発症高血圧ラットを用いて検討を加えた。その結果、全血を用いた組織因子希釈プロトロンビン時間(WPT)はthrombin- antithrombin III (TAT)および血圧と相関し、凝固系と病態との関連を示唆する分子マーカーとしてラットで有用であることを示した。凝固系実験モデルをマウスの系に応用し得るかを明らかにするため、病原大腸菌O-157の毒素VT-2を用い、これとエンドトキシンとの凝固系に対する相互作用について検討した。その結果、マウスの系では血小板数、fibrinogen、TATが病態・致死率と一致し、捉える事ができた。WPTについてはtissue factor pathway inhibitorの影響を示唆した。腎臓における組織因子などの発現も強く認め、上記の凝固系のマーカーと相関し、マウスで追跡できる凝固系マーカーを明らかにした。
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