事実に基づく臨床検査診断学(evidence based laboratory medicine)を実践するためには、信頼に足る十分な疾患別症例データベースを構築することが最重要課題となる。そこで今年度は、病態情報を収集・記録する作業に精力的に進めた。すなわち、既存18疾患(627例)のうち、骨髄腫、肝硬変、甲状腺機能亢進症の症例数を各10、18、15例追加した。また、新らたに所定の診断規準に則って、SLE38例、皮膚筋炎28例、強皮症34例、シェグレン症候群13例、慢性腎不全39例、IgA腎症64例、ネフローゼ症候群37例、悪性リンパ腫64例、急性白血病50例、成人Tリンパ球性白血病24例、膵癌61例の病態情報を集め、その検査データを各疾患に特徴的な臨床所見と共に記録した。これにより、総症例数は29疾患、1122例と大幅に増加した。このデータベースを利用する診療支援プログラムに関しては、医大生の検査診断学実習での利用を通して、ユーザインターフェースの改良を重ねた。特に、データの操作ボタンを減らして大きくすることで見やすくした。また疾患ごとに検査項目の重要性を5段階にランクづけることで、主要な所見をワシタッチで抽出して表示できるよう工夫した。次年度の課題は、(1)累積対数尤度値を用いた動的かつ定量的な診断支援システムの改良、(2)検査値の施設間差を考慮した数値のrescale機能の実現、(3)各疾患に特徴的な所見を抽出して電子教科書として利用可能とすること、などである。
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