1.看護婦に対する法的規定 日本では、昭和23年に制定された保健婦助産婦看護法の保健婦、助産婦および看護婦の業務に関する規定に変化はないが、アメリカではその法制度の下、例えば看護過程に基づいて業務を行なうなど、具体的な業務内容がその実態に合わせ規定されている。また、看護の専門性に見合った資格(Nurse Practitioner、Certified Nurse Midwife、Clinical Nurse Specialistなど)とその業務内容が規定されている。 2.医療事故判例の分析 日米における1970年代以降の看護職が関与した医療事故判例を分析した結果、両国とも看護業務が医師の補助的な役割から、主体的なものへと変化してきていることが明らかとなった。特に、患者の安全に関する業務のうち、観察では、医師の具体的な指示がない場合であっても、看護婦には主体的に必要な情報を収集し、異常か否かを判断し、異常を発見した時は、直ちに医師に報告する業務が課せられており、これは実態と合致する。 3.まとめ 両国の法制度に相違はみられるが、看護婦(Registered Nurse)の実際的な業務内容は類似しているため、看護婦に課せられた具体的注意義務に大きな相違はない。今後、両国において医療が施設内から施設外へとより拡大する中で、看護業務内容の高度化、専門化とともに、看護婦が負担する法的責任も大きくなることが予想される。
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