研究概要 |
本研究の目的は、睡眠障害者への睡眠の質的改善に、リラクセーション技法の有効性を検証することである。初年度は、リラクゼーション技法そのものの有効性を検証するための基礎研究を企画・実施し、次の知見を得た。 1, 漸進的筋弛緩法(以下筋弛緩法という)によって惹起されるリラックス反応は、安静法における反応とは異なり、より深いレベルのものであることを実験研究により明らかにした。生理指標は、脳波および心拍変動である。認知・感覚的指標はSTAI不安テストと身体感覚尺度であった。対象は健康な女性20名である。同一被験者により対照実験と本実験を体験させ、両技法による反応を比較した。 2, 具体的には以下の結果であった。(1)脳波の高速フーリエ変換法(FFT法)によりα波およびθ波の周波数帯域の変化を比較した。安静法時には僅かな増加傾向が示されたのみであったが、筋弛緩法時には8名に顕著な増加が見られ、残りの12名も増加傾向を示し、有意なリラックス反応であると思われた。(2)筋弛緩法時には、平均心拍数の減少と平均RR間隔の延長が見られ、心臓自律神経系の鎮静化の傾向が示されたが、副交感神経機能の亢進の有無については確認できなかった。(3)全例においてSTAI状態不安得点の低下と筋弛緩感覚の高まりを示す身体感覚尺度得点の上昇が見られ、筋弛緩法時において、より顕著であった。 3, 得られた知見と今後の課題:筋弛緩法は、安静法とは異なり、より深いレベルのリラックス反応を引き出せる可能性が示唆された。その反応は、脳波上に示されたα波およびθ波の周波数帯域の増大から大脳認知機能におけるリラックス感の高まりと、心臓自律神経機能における心拍数の低下やRR間隔の延長であった。このことは認知・感覚的尺度にも示されており、臨床的な睡眠障害者への同技法の適用の理論的枠組みとなるものである。
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