研究概要 |
本研究の目的は、睡眠パターンの変調をきたした入院患者への介護介入として、リラクセーション技法の有効性を検証することである。初年度は、実験研究により健常成人女性23名全員に安静と漸進的筋弛緩法(Progressive Muscle Relaxation 以下 PMR という)の両セッションを体験させ、惹起されるリラックス反応の差異を検検討した。その結果、安静時に比べ、PMR時はθ波の有意な増幅とα・β波の減衰、および平均心拍の減少と心拍変動性の上昇が見られた。セッション終了直後は安静時よりも高い交感神経活性化が示され、PMRによる一時的な生体負荷と初回練習による課題達成上のストレスが推測された。しかし心理テストおよび身体感覚尺度における筋弛緩感覚の増大はPMR時に有意に高く肯定的な内省報告が多数を占め、PMRの有効性が検証された。 上記の結果を基に本年度は、準実験的手法により睡眠パターンの変調をきたしている入院中の成人患者(対照群20名、PMR群8名)を対象にPMRによる睡眠の質的改善の効果を検討した。 1, 対象群にはPMRの介入せず睡眠パターンの変調を調査した。POMS(感情プロフィール検査)およびSTAI不安テストによる状態不安得点が高得点となりSEQ(自己記入式睡眠評価尺度)得点が低下していた。 2, PMR群は、PMRの練習後に身体感覚尺度得点が上昇しリラックス感の知覚が得られ、POMSの緊張-不安および疲労得点、STAI不安テストの状態不安得点が減少した。SEQの入眠・熟睡・起床時得点が上昇し睡眠の質的改善が示唆された。しかし被験者数が少なく統計的有意差を検証するには至らなかった。
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