本研究の目的は、死生観をめぐる現代の日本人の意識変化を把握し、死生観を育む教育の模索を現実的で有効なものとするための死生観測定尺度の作成である。本年度は計画に従い研究を進め、以下の結果を得た。 1. 死生観に関する国内外の先行研究及び文献の検討結果 死生観に関する国内外の先行研究で用いられている測定尺度は、CLS、DAS等の死の不安尺度やSpilkaらの死観尺度が中心となっている。これらの尺度では、死生観が擁している問題を十分に網羅しているとは言い難い。また、死を前にした「あきらめ」、「自然随順」等の日本人の死生観を測定するには不十分であることが明らかになった。 2. 死生観の概念に関する自由記述式調査の方法及び結果 M市周辺に在住し調査に同意が得られた高校生73名、短大生104名、社会人35名を対象として、対象の属性(年齢、性別、職業)、死生観に関する尺度作成のための自由記述式質問(「人間の生命」、「人間が生きるということは」、「人間が死ぬことを考えると」、「人間の死」、「死後の人間は」を主語とする文章完成法で回答を得る)を調査した。 対象の年齢は10歳代106名、20歳代74名、30歳代2名、40歳代6名、50歳代9名、60歳代9名、70歳以上6名であった。性別は男性61名、女性151名であった。5つの主語に対する自由記述件数は、それぞれ211、220、228、203、204件(複数回答)で、これらを内容の類似性から分類し、死生観の観点別に整理した結果、死とはどのようなものか20件、死後の生10件、死に対する情動反応7件、死に対する心構え7件、生のとらえ方20件の下位尺度が対応していた。今後は、以上の調査より抽出された死生観を測定する下位尺度で構成される質問紙を用いた調査を実施し、信頼性、妥当性などを検討していく。
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