本研究は、死生観を育む教育に関する模索をより有効で現実的なものとするための基礎的研究として、現代の日本人の死生観を測定し得る尺度を作成することを目的としている。 <平成12年度までの研究実績の概要> 平成10年度:死生観測定尺度下位項目を抽出する目的で自由記述式調査を実施し、高校生〜社会人516名から有効回答を得た。記述を内容の類似性からコード化し132の下位項目を抽出した。 平成11年度:132下位項目の妥当性を確認する目的で質問紙調査を実施し、高校生〜社会人476名の有効回答を得た。分布の偏りの検討と因子分析により49項目を抽出した。 平成12年度:死生観測定尺度原案の妥当性と信頼性を検討する目的で、49項目、既存の関連尺度から構成した質問紙による調査を行い、高校生〜社会人323名の有効回答を得た。因子分析により、既存尺度に無い下位尺度を含む6因子42項目を採択した。α信頼性係数は、0.83、0.85、0.81、0.76、0.64、0.65であった。併存妥当性を確認するため、各因子の得点合計と既存尺度の下位尺度得点との相関をみたところ、各因子内容と関連下位尺度間で高い相関がみられ、信頼性と妥当性が支持された。 <本年度の研究実績の概要> 開発した死生観測定尺度を用いて調査を行い、高校生、大学生、看護学生、社会人、看護婦952名の有効回答を得た。因子分析では昨年度とほぼ同一の6因子(死の悲しさと不安/恐怖、不死感/死後の世界、生物としての人間/死は終わり、関係存在である人間、人智を超えた生命、自然/宇宙のなかにある生死)35項目が採択された。死生観には、年齢、性別、結婚、職業などが関連しており、影響の強さを数量化理論I類によって検討した。各因子得点の高低には複数のパターンがあることが確認された。
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