研究概要 |
本研究では,2000組の多胎児とその家族を対象とした実態調査の分析から,障害児のいる多胎児家庭がかかえる問題点を明らかにし,効果的なファミリーケアの具体的方策を検討した。本研究結果から,以下の知見が得られた。 1)障害児のいる双子の母親は,障害児のいない双子の母親に比べ有意に健康状態が悪化しており,かつ身体面で重度の疲労感と睡眠不足を訴えていた。さらに,障害児のいない双子の母親は,双子が3歳以上になると疲労感や睡眠状態が改善するのに対し,障害児をかかえている双子の母親では双子が3歳以上になっても疲労感および睡眠状態は改善しないことが明らかとなった。したがって,このような障害児をかかえる多胎児家庭に対しては3歳未満の乳幼児期だけのサポートでは不十分であり,保健婦による訪問,ヘルパーの派遣,ボランティアの斡施,および児へのデイケアなどのサービスを長期的に実施する必要があることが示唆された。 2)障害児をかかえている多胎児の母親でもストレス解消法をもってる母親は,ストレス解消法をもたない母親よりも心身両面で疲労感が軽減していた。これらのストレス解消法があると回答した障害児をかかえる母親は,特別なことをしているのではなく,友人と話をしたり,電話するなど人とコミュニケーションをとることでストレスを解消していた。また,多胎児の育児サークルの活動に参加することや同じ境遇の親と交流をもつこともストレス解消法として挙げていた。これより,障害児をかかえる双子の母親に対しては,保健所などで障害児をかかえる双子の母親同士の交流会を実施することや障害をもつ多胎児の育児サークル等の自助グループを育成することにより,障害児をかかえる母親のストレス解消,さらには疲労感をも軽減する効果が期待できることが示された。
|