閉じこもり状態にあることは、高齢者を寝たきりや痴呆にさせる原因となると報告されている。そこで、高齢者が、閉じこもり状態となる要因を明らかにする必要性を考え、高齢者の生きがいに注目して調査を実施した。対象者は、福祉施設で生活する高齢者であった。数回の面接によって聞き取った内容を分析した。 3年間の研究の総括によって、以下の結論を得た。 1.閉じこもり状態及び生きがいについては、現在のところ概念規定が確立しておらず、高齢者ケアの重要な研究課題である。 2.閉じこもり状態で過ごす高齢者の生きがいの内容は、(1)楽しみとしていること、(2)思い出として大切にしていること、(3)人生の節目として捉えているもの、(4)心の平安が得られるもの、を含んでいると考えられた。 3.閉じこもり状態にあっても、他者に対して心を閉ざしているのではなく、高齢者個々が、生きがい感を持ちたいと思っている。 4.継続的な面接を拒否する対象者はおらず、人間関係が深まることによって、生きがいを援助者と共に発見することができることが明らかになった。 5.生きがいを見つけることは、高齢者の心の支えを見い出すことにつながり、高齢者ケアにおいて、生活の質を改善するための重要な課題である。 6.以上の結果から、回想法等の高齢者の生活過程を尊重するかかわりをケアに組み込み、その意義を明らかにする研究を今後も継続したいと考えている。
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