平成12年度は11年度の追加調査として、家族と同居し一戸建て住宅に居住している65歳以上の男女で、(1)生活自立度ランクAまたはBの在宅療養者2名、(2)睡眠障害の訴えがない健康な高齢者5名の計7名からデータを収集した。調査内容は昨年度と同様、客観的データとして(a)アクチグラムを用いた活動量の計測、主観的データとして(b)生活習慣調査、(c)睡眠日誌、(d)住居の間取り図である。 結果として、在宅療養者はある程度外出していても活動量そのものが少ないこともあり、健康な高齢者ほどメリハリのある睡眠覚醒リズムを呈していなかった。また、行動範囲がベッド周辺に限られている療養者は、1日の大部分をベッド上で過ごしているため容易に睡眠しやすい状況にあり、午睡が多くみられた。そのことは夜間睡眠にも影響していると考えられた。 一方、健康な高齢者は概ね正常な睡眠覚醒リズムで生活しており、睡眠時間はそれほど長くない場合でも、入眠潜時が少なく効率のいい睡眠をとっていた。 アクチグラムによるデータ収集は、最終的に在宅療養者11名、健康高齢者9名の計20名となった。中には欠落データのために解析対象とならないものもあるが、在宅療養者は健康者に比べ身体的機能が低く行動範囲が狭いため、居住環境のあり方によってさらにその行動は制限されやすい。その結果、睡眠覚醒リズムに影響を受けていることが推察された。 本研究は今年度で終了するが、今後は、在宅療養者の居住環境と生活リズムとの関係を、「人間-環境系」の視点からさらに深めていく予定である。
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