平成10年度の面接調査結果を基に訪問看護における看護婦の裁量権行使に関する質問紙調査票を作成し、無作為に抽出した全国の300訪問看護施設(管理者・看護婦・医師)に郵送調査を実施した。その主たる結果は次のとおりである。 1.訪問看護婦が医療行為において裁量権を行使した経験内容 裁量権を行使した内容は「褥創発見時の処置(88%)」「肺理学療法の実施(80%)」「機能回復訓練実施(78%)」「内服薬の増減(77%)」の順に多かった。さらに具体的な内容をみると「創傷の処置の追加・省略(59%)」「機能回復訓練の内容や回数の変更(57%)」「膀胱洗浄実施(49%)」等が上げられた。 2.訪問看護婦の医療行為における裁量権行使に関する訪問看護施設管理者の考え方 訪問看護婦の裁量権についてはほぼ全員が(「ある程度は必要である」(87%)「全面的に必要である」(12%))必要であると考えており、医師の指示は「包括的指示で緊急や患者のニードによって裁量できる」と85%が答えている。「医療行為を看護婦の裁量で実施できるとしたら困る問題があるか」との問いに「ない」と30%が答え、70%が「ある」と答えている。困る理由として多く上げられたのは「現在の法制度の問題」「責任が取れない」であった。 3.訪問看護婦の医療行為における裁量権行使に関する医師の考え方 訪問看護婦の裁量権行使を認めず「医師の指示を再度受けるべきである」の割合が高かった項目は「服薬管理・指導(42%)」「在宅酸素療法管理・指導(38%)」「気管カニューレの管理・指導(23%)」「経管栄養の実施(21%)」の順であった。その理由として「訪問看護婦の実施に責任が負えない」とする意見がほとんどであった(83〜65%)。この4行為以外の医療行為(15項目)については「変更・中止しても差し支えない」「患者の状況によっては差し支えない」(両方を合わせるとほとんどの項目が約7割)とする意見が多かった。
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