実際の医療現場では各医療専門職が医療を受ける側のニーズに対応して、それぞれの職種の専門性に応じた責任分担と協働により医療業務が成り立っている。本研究では、病棟という入院医療を提供する全体状況の中で提供されている医療サービスの分析を行うことにより各医療専門職の専門性とそれぞれの職務内容を明らかにして、対象者のニーズに対応できるより効果的な医療業務分担と協働のあり方を提案するものであり、チーム医療を考える上での基礎資料を提供するものであると考える。 病棟業務の適性化のためのデータを収集する全段階として、平成10年度は病棟の医療業務に携わる各医療従事者の制度上、法的な位置づけを明らかにし、また国内外の文献やいくつかの病院の資料により、各職種の実際の業務内容や業務記述を参考にしながら、それぞれの医療従事者の職務と職務内容を抽出し、各職種間の境界領域に位置する業務について明らかにした。その結果、ある職種が実施している業務内容の中にも、1)法的にも専門性の面からもその職種が行わなければならない業務(専門業務)、2)その職種が行わなくてもある程度の教育訓練により無資格者でも実施可能な業務(支援業務)、3)従来はある職種が行ってきたがその業務の専門性から考えて他職種に委譲した方が患者にとっても、成果としても望ましい業務(他職種委譲業務)、4)専門的な知識が必要とされ、他の専門職と協働して行う業務(協働業務)、状況により他職種とオーバーラップする業務が含まれていることが明らかになった。次にかなり各職種間の協働体制が整ってきているいくつかの病院に、以上4つの業務内容の分類により、各医療専門職の業務を再度検討してもらい、各職種間の境界業務とその線引き基準を出してもらった結果、各医療施設により、スタッフの配置数や能力レベル、管理体制によりその基準は異なり、従来よりの経験や人間関係、リーダーシップにより協働体制が影響されてることが明らかになった。
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