平成10年度は病棟の医療業務に携わる医療専門職間の境界業務の線引き基準は、一般化できる明確なものがないことが明らかになった。本年度は、調査協力が得られた5つの総合病院に勤務する医療専門職(看護婦、医師、理学療法士・作業療法士、臨床工学技士、医療ソーシャルワーカー、臨床検査技師、栄養士)を対象に、日常の業務における相互の職種間の連携状況を頻度と関わりの質の両面から探り、また今後、各職種が必要と感じている職種間連携の内容について調査を行った。また看護職に関しては、連携状況の調査と併せて、日常行っている看護業務に必要な知識・技術の複雑性と、各業務の持つ専門性について判断してもらった。 その結果、看護職が現在行っている業務の中には、他の無資格者に委譲できる業務がかなり存在し、また他の医療専門職と協働して行なった方が望ましい結果が得られると思われる業務もかなり多いことが明らかになった。医療職間の連携の頻度については、看護職と医師の連携が最も頻繁に行われているが、その他の職種間の連携の頻度はかなり低くかった。しかし看護職は、他の医療職にくらべ各職種との関わりの頻度が際だって高く、患者ケアの要に位置することが分かった。また関わりの質についても、関わりの頻度との関連が認められ、頻度が高ければ高いほど相互にチームメンバーとしての認識が高かった。またチーム医療における職種間の連携を妨げている要因についても、患者中心のケアに対する認識の欠如、他職種の専門性に対する認識の低さ、相互に関わりを持つような業務システムの欠如、各専門職の専門職としての未熟性、等があげられておりチーム医療を推進する上での今後の課題が明らかになった。
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