平成12年度は、平成11年度の再実験の継続を行って分析した。再実験は、観察時間を1分間に設定し、観察する看護場面を「人間」「生活物品」「医療器具」を明確に分類できるように変更、測定機器は両眼眼球運動測定装置(竹井機器)に変更した。被験者は、平成11年度の看護大学臨地実習未経験者1年生29名に加え、基礎看護教育課程が殆ど終了した4年生18名、臨床看護経験5〜10年目の看護婦20名であった。今回の分析対象者は、両眼の注視データが得られた1年生20名、4年生10名、看護婦10名(看護経験7.00±1.63年目)とした。実験方法はTVモニター画面に静止した看護場面を投影し、その場面を観察する時の両眼眼球運動を測定した。また、実験後に研究者が看護場面から抽出した58の観察項目について観察の有無の調査を行った。 分析は、看護場面を20エリアに分類し、その注視時間、注視回数、観察項目数から1年生、4年生、看護婦の3群の比較を行った。注視点は5度/sec以下の移動速度の眼球運動を抽出した。 結果は、平均注視時間・平均注視回数の上位エリアは3群とも「患者の顔」「患者の寝衣・体位」「車椅子」であった。しかし、1年生は「患者の寝衣・体位」「テーブル」のエリアが4年生や看護婦より注視回数が少なく有意差が見られた。また、「IVHルート」などの治療面のエリアに注目が少なかった。観察項目では患者の具体的な観察の項目が他の2群より少なかった。4年生は注視回数は多いが、看護婦に比べて具体的な観察はできていなかった。 以上から看護婦の結果から比較すると1年生は「人間」「生活物品」は意図的に注視しているが具体的に観察するに至っていない。また「医療器具」の観察は注目しにくいことが伺えた。4年生もまだ具体的な観察には至らず継続学習の必要が考えられる。
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