研究課題
昨年度は、既に抑制を廃した老人病院での面接調査から、「抑制を廃止したことによる変化」として、患者の褥創や関節拘縮が少なくなったこと、不穏状態が改善したこと、看護職員のケアの質が向上したこと、看護職員の職務満足が高くなったこと、などが明らかになった(看護職員の主観的評価)。平成11年度は、身体抑制廃止の効果を客観的指標を用いて実証することを研究目的とした。「抑制廃止福岡 宣言」を行った施設の1つであるA病院に入院している(入院していた)86名の患者を対象とした。実施時期は、平成11年8月である。研究方法は、当施設が3カ月毎に測定している「高齢者アセスメント表(MDS)」の記録から、抑制を完全に廃止した平成10年10月を基準として、その前後の変化について、抑制群と非抑制群に分けて比較した。86名のうち、急性症状が発生した者、および「状態の安定性」が疾患によって影響を受ける可能性のある者を除外し、最終的に67名(抑制群16名、非抑制群51名)について分析した。その結果、両群に最も大きく差が見られたのは、「D-3 問題行動」(p<0.01)であり、非抑制群に、徘徊、暴言などの問題行動が改善した患者が多かった。また、「C-1 日常生活における自己動作」について非抑制群の方が改善した患者が多い傾向が見られた。その他、「H-4 注射」についても、非抑制群の方が注射の回数が減少した者が多く見られた。次年度は、看護基礎教育に焦点をあて、「抑制」に関する教育の実態を明らかにし、今後、抑制についてどのように教育を行っていくべきかを考察する。
すべて その他
すべて 文献書誌 (3件)