研究課題
基盤研究(C)
平成10度は、既に抑制(身体拘束)を廃止した老人病院に勤務する看護職への面接調査を通して、(1)抑制廃止を可能にした要因、および(2)抑制しない代わりに使っている看護技術を明らかにした。(1)については、施設長と看護管理者の抑制廃止に対する明確な理念と強いリーダーシップ、抑制に代わる技術の活用、抑制廃止の効果の実感(患者の不穏状態の軽減、褥創の減少など)、看護スタッフの職務満足が高くなったこと、(2)については、物理的環境調整、柔軟な状況判断、危険の予測、家族へのインフォームドコンセント、などが明らかにされた。平成11年度は、身体抑制廃止の効果を標準化された指標を用いて実証することを研究目的とした。「抑制廃止福岡岡宣言」を行ったA病院に入院中の86名の患者を対象とし、当施設が3カ月毎に測定している「高齢者アセスメント表(MDS)」の記録から、抑制を完全に廃止した平成10年11月を基準として、その前後の変化(改善、不変、悪化)について、抑制群17名と非抑制群57名に分けて比較した結果、両群に最も大きく差が見られたのは、「D-1悲しみや不安な気持ち」「D-3問題行動」(p<0.01)などであり、抑制群の方に有意に改善がみられた。平成12年度は、看護基礎教育における「抑制」に関する教育の実態を明らかにした。質問紙調査を実施した結果、回答が得られた241名の教員のうち、約半数が抑制について授業していた。抑制を教える目的は「対象の安全安楽」が最も多く、次が「対象者の人権保護」であった。111名の教員のうち72名(64.9%)が安全と人権侵害の両側面をもつ抑制(縛ること)を教えることにジレンマを抱いており、抑制に関する教育理念、教育方法を再構築することの必要性に迫られていることが示唆された。
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