研究概要 |
本研究では,脱水予防のための飲水援助の基礎的な資料を得る目的に,活動レベルの低い要介護高齢者を対象に,水分出納の状況・飲水行動の実態を調査し,検討した.研究期間は2年間であり,調査の対象者は訪問看護ステーションを利用する要介護高齢者9名(平均年齢80.7歳:在宅対象者)およびその介護者,特別養護老人ホーム入所者2名(82.5歳:施設対象者)および介護職員である.1日の水分総摂取量は飲用水と食事からの摂取量,エネルギー消費量から推定した燃焼水を加算して求めた.その結果は次の通りである. 1)在宅対象者での水分総摂取量の夏期での平均は約2リットル(飲用水・食事による摂取が各々約1リットル)であった.この内6名は冬期も同様な調査を実施したが,摂取量は約2.1リットル(飲用水1.2リットル,食事による0.8リットル)であった.いずれの値も個人差が大きい.2)在宅対象者の水分摂取は介護者にほぼ依存しており,介護者の飲水への関心や知識,技術等が摂取量に反映されているものと推測された.3)施設対象者では,夏期での平均摂取量は約1.4リットル(飲用水0.8リットル,食事による0.9リットル)であった.この対象者には7日間連続で調査したが,その変動は特に飲用水で大きく,行事の参加時の飲用等が影響していた.4)施設対象者の内1人は自己摂取可能であり,もう1人は不可能であるが,摂取可能者の方が摂取量はやや少なかった.施設対象者の水分摂取は,実際には入浴後や摂取時刻を決めて対応しているが,今後特に摂取可能者の摂取状況の確認や積極的な飲水への取り組みがさらに必要であることが認められた. 以上のことから,要介護高齢者が脱水予防につながる水分量を確保するには,その介護者が高齢者の日々の生活状況をいかに把握して,積極的で計画的な飲水援助を実施していくかが鍵となることが認められた.そのために,介護者への看護職による専門的なサポートが重要であると考える.
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