わが国の小児看護領域におけるインフォームド・コンセント(以下IC)の実態につき、1.医学文献レヴュー、2.質問紙によるオリエンテーションの実施調査、3.面接法による慢性疾患患者に対するICの実施状況についての聞き取り調査、を実施し、検討した。 1.医学文献レヴューによるIC動向の分析 医学中央雑誌CD-ROM(1987年〜1998年)を用い、タイトルにICを含むもの(2551件)と同タイトルに『看護、ナース、ナーシング等』(291件)を抽出し、入手できた約300文献の発表年次的推移と看護領域におけるIC文献の内容を分析した。 (1)過去11年間における医学領域のIC文献に占める看護文献は約11%で、1990年以降急増した。(2)看護文献の内容では、癌患者に関するICおよび告知、ICにおける看護婦の役割に関する文献が多く、告知とICを同意に用いている文献が多数みられた。(3)対象別領域において小児看護に関する文献は4%に満たなかった。(4)看護過程、および看護行為に関する文献は極少数であった。 2.オリエンテーションを小児に対するICの機会とした場合の実施状況 質問紙に回答が得られた全国の小児入院病棟を有する大学病院および小児専門病院63施設、130病棟の小児へのオリエンテーション実施状況の実態について検討した。 (1)入院、処置、手術等に関する小児自身へのオリエンテーションは、121病棟(99%)行なわれており、広く浸透してた。(2)オリエンテーションは、内容によって看護職だけでなく、異なった職種の人がオリエンテーションを実施しており、入院・処置・手術等において、小児が安全・安楽に経過するために協力を得ることや、心理的準備を図ることを目的とするものが多かった。(3)オリエンテーションは口頭で行なわれる場合が多く、使用しているパンフレットや絵本等は成人や保護者向けの者が多く、小児の年齢・理解力に応じた視聴覚物品を用意、工夫している病棟は少なかった。 3.慢性疾患患者に対するICの実施状況に関する考察 承諾が得られたIDDMを小児期に発症した14歳から35歳の男女9名を対象に、小児期を振り返ってICに関するエピソードを面接調査し、IC実施状況と小児の認識について考察した。 (1)発症時に病名、病態、治療などに関して小児自身に対するICは行われていなかった。(2)血糖測淀、インシュリン注射、尿糖検査、食事療法等のIDDMの生活管理について、発症年齢に関わらず、年少時から説明、指導が実施されていた。(3)成人である現在、小児期のICを振り返り、全員が小児自身への説明を必要と認識していた。(4)ICに際して医療者に要望する内容は、年齢や個別性により説明内容や方法等、個人のニーズに合わせた方法の選択に関するものであった。
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