研究概要 |
本年度は,山形市内の家族会を中心に,精神分裂病の子供を持つ親の障害受容に関する調査を行った。家族の年代では50代から70代の人が多く,家族の高齢化が顕著であった。病状回復への期待は,発病してからの1〜2年の間は一般の就労,経済的自立を目指すが,3から5年たつとパート,アルバイト,作業所・デイケア通所までの回復を期待し,さらに現在に至ると作業所,デイケアに期待する割合がさらに大きくなっており次第に子供の状態を冷静に判断するようになっていることが伺えた。ただばらつきも大きく,家族によって期待する回復程度が異なっていることがわかった。親が死んだ後の子供の生活の拠り所として,グループホームや援護寮を希望する親が多かった。このことから親は自分の死後の子供の生活を非常に心配しており,生活できるための施策の充実を求めていることがわかった。また発病時から調査時までの家族の考え方の変化をみると,全体的に宗教に頼ったり,子供のいることで夫婦関係が悪くなることもなくしっかりとした家庭を維持していた。子供に対する対応は,共依存傾向から次第に子供の自立性を認めると同時に,親の生活も大切にしていく傾向がみられた。これらの成果から,家族の障害受容のケアを行うときには,親の子供に対する期待や親と子供の依存関係などを考慮する必要性が示された。 実際の家族ケアにおいては,2名だけであるが実施できた,調査に用いた項目を基に家族の気持ちを理解するように接すると,家族の反応がよく,従来家族が自分たちの苦しみを伝える機会が少なかったように思われた。このようなデータを基に今後家族ケアを進めていくことが重要であると考えられた。
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