研究課題
本研究は、多胎を出産した母親の出産体験の価値づけと母親意識の形成・変容の実態を明らかにし、育児ノイローゼ、乳幼児虐待を予防するための援助モデルを作成することを目的としている。そこで、平成12年度は、多胎児の母親への援助のあり方を検討する目的で質問紙調査(調査1)と面接調査(調査2)を実施した。調査1では、経膣分娩をした産後1〜14日目の母親1100名(双胎20名)を対象に出産体験の価値づけと母親意識の関係について「出産体験の自己評価尺度」と「母親意識尺度」、「産後うつ尺度」から構成される質問紙調査を行った。調査期間は12年4月〜8月であった。その結果、出産体験の価値づけが低い場合には産褥早期の母親意識も消極的であることがわかった。調査2では、多胎を出産した母親18名(双胎14名、品胎4名)を対象に半構成的面接法により多胎を出産した母親の出産体験の自己評価と産褥早期の母親意識の関係を検討した。面接対象者の分娩様式は、経膣分娩3名、帝王切開15名であった。調査期間は、平成11年1月〜9月。面接内容はカセットテープレコーダーに録音し、その逐語録について内容分析を行った。その結果、出産体験の価値づけに影響を及ぼす要因として、妊娠期の健康管理、分娩方針に関するインフォームドコンセント、出産に対する満足感、新生児の健康状態、出産直後の児への接触、分娩時・分娩直後の産科医療スタッフの関わり、分娩時の夫のサポートがあげられた。また、出産体験の自己評価が否定的な場合は母親意識はが低く育児も消極的になる傾向があることがわかった。多胎児の母親の場合、異常分娩になるケースが多いため母親が出産体験を肯定的に価値づけられるような関わりが必要であるといえる。